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川は下りの方が怖い![]() 登りは、あっさりの滝でも降りる時は別物だ。油断してたら、転落して白骨化かな?とか割と平気でのほほんと降りるのだ。どこかで楽観主義者でないと冒険はできないです。 と言ってる矢先ですが、先日八甲田で死者が出たとか。(Tくんほんとですか?新聞記事検索がみんな有料になってできないよ)写真撮りに入ったとか。お願いですから安易に南八甲田へは入山しないで下さい。体力ありますか?経験を積んでますか?地図は読めますか?装備は十分ですか? 2005年の「東京大学ワンダーフォーゲル部八甲田連峰縦走記」というのをwebで見つけました。 http://kmunakata.sakura.ne.jp/jyuso/index.html 南八甲田のきびしさがよく出ていますので勝手に引用させてもらいます。(ここに登場するのはそれでも登山道らしきものがあるところです。川も同じです。沢だけ歩いて源流までたどり着ける川はありません。) 「この程度の藪であれば私達にとって大敵ではありません。」と最初のころ、 「櫛が峰-横岳間は想像以上に藪が濃く、通過に11時間を要しました。」となり、 「....、この一言でパーティに衝撃が走りました。二時間進んで地図上でたったこれだけの距離しか進んでいないことに誰もが焦り、緊張感が一気に高まりました。」ときて、 「誰もが追いつめられていました。」 「猛烈な笹薮に灌木が混ざり、私達の歩みは正に亀か牛の如く遅いものとなりました。私達は薮の生え目、木の下といった藪が薄い箇所を必死に探し、それらをつないで弱々しい歩みを進めていきました。どうにか下りにかかり、この尾根と分かれることができましたが、その先のコル、更にその登り返しになっても、薮の状況は全く変化がなく、私達は悶々としながらもどうにか歩を進めました。」 「事前の情報では、横岳から下っていくと途中から横沼展望コースという踏み跡に出るということでした。その踏み跡が斜面をいくら下っても見つからないのです。もしこのまま踏み跡が見つからずに、前日のような深い藪に突入したら・・・私達はもう一日大苦戦を強いられるのでしょうか?そのような不安を抱きながらも、とにかく私達に今できることは目の前の藪を進むことしかありませんでした。笹の背丈はいつの間にか身長をはるかに超えるようになっていました。」 へへっ、人の苦労は笑えるなあ(性格悪いね)。薮地獄お疲れさまでした。ほんとにこんなもんです。これでさえ登山地図に出ている赤破線なのです。3000m級を何本踏破しようともそれとはちがうきびしさがたかだか1500mの南八甲田にはあるとおぼえてください。覚悟なしでは絶対に入らないでくださいね。(僕のブログを読んだ人が遭難したというのだけは避けたい) ブナの不作と熊出没激増![]() 実りの秋になりましたね。クリとかはいいんだけど、ブナの実が今年は不作(去年が大豊作。翌年は必ず不作になる)なので、熊が心配です。 青森県自然保護課によると、県警に寄せられたクマの目撃情報は、昨年一年間の六倍近い二百六十九件に達している。特に八月は昨年の約十倍の百十一件、九月は半月分の集計ながら昨年九月全体の十三倍の三十九件に上っている。(東奥日報)そうです。 それも南八甲田と下北に集中している!こわいですねえ。 いくらオレが青森県の百メートルで優勝したという自慢をしたところでけものには勝てないべさ(熊は百メートル7秒くらいで走るらしい。)高校の時は上級生の不良グループをぶん殴ったという話をしたところで熊には勝てねべ。それも35年も前の話だし(自爆)。話し合いによる平和的解決しかないなあ(笑)。 10月6日から、熊目撃マップの印が赤点で集中しているところに行ってきます(怖)。 ひとつの源流の終焉、ほんとの終了![]() もう終わるような気がしていた。 ただどんな終わり方をするのかだけがわからない。 一回もぐるのだろうか?涸沢になってまた出てくるのだろうか? ![]() ![]() 薮が川の覆いかぶさってきて非常に歩きづらくなった。 腰をかがめたりしゃがんだりしながら歩く。ザックを背負ってかがみながら歩くのはしんどい。 カメラも首から下げているのでなおしんどい。もうこれだけ薮が覆っていると地図上では川はなくなっているだろう。 航空写真を元にした作図では川は確認できないだろうから。 しばらくしてどんづまりに行き当たった。 ![]() もう匍匐前進状態に陥った。 ![]() そしてほんとに行けなくなった。四つん這いになって奥を覗いてみたけれど、真っ暗闇に消えている。 両側の薮に上がってみた。背丈を越すとんでもない薮が続いていて無理そうだ。右も左もだめ。 「終了だな」 端っこの石に腰掛けた。沢の水をすくって飲んだ。 あっけない終着を、静かに受け入れるだけだった。 こんな終わり方もあるんだな、と。 いや、.... これは終わりじゃなくてはじまりじゃないかと、そんなあたりまえのことを、突然はじめて気づいたかのようにふと思い浮かんだのだ。おかしなものでその途端に、一抹の寂しさのような思いが霧が晴れるようにふきとんで心が軽くなったのだ。 こんなちっぽけなはじまりが、下に行くにつれてどんどん膨らんでゆく。見事な滝やゴルジュや広川原を作る。その原点に僕は腰を降ろして源水を飲んでいる。なんだかロマンがあるよね。ゲームの王様の椅子に座ったような愉快さ。実に爽やかで晴れやかな気分になってきた。 腕の筋肉痛や足腰の疲れやザックの重さの肩の食い込みやらは極致だったけど、気分だけはこの上なく爽快になって僕は沢を下った。下り始めてすぐ雨が降り始めた。なんというタイミングだろう。まるで原点までたどり着くのを待っていたかのようだ。南八甲田の山の神様は僕を愛してくれているよ。僕はそんな勝手な勘違いを素直に受け入れている。矛盾してるって?そんな物わかりの良いつまらない合理主義などとっくに僕の身体から消え失せていた。 ひとつの源流の終焉その6ひとつの源流の終焉その5ひとつの源流の終焉その4ひとつの源流の終焉その3
山行を続けていると、いやな予感というものがしばしば去来して、それは大方当たる。直感とかいうものは素直に信用した方がいい。
直感という言い方はほんとは正しくはないかもしれない。多くの経験値から導き出される予想とか野性的な本能と言った方がいいかもしれない。 例えば、 川を歩いていてしょっちゅう転ぶというのは、それが朝だった場合、睡眠不足が影響していてバランスをくずしている場合が多い。いやなものが去来する。その場合はすぐ休んだ方がいい。それが夕方だった場合は、疲労からきている。それはもう歩くのをやめた方がいい。もう無理だと身体が教えているのだ。 地図やコンパスでもわからない分かれ道にきた時でも、読図の理論値とか見た目の開け具合とかで道を選んでも、進んでいるうちにいやな予感がしてきた場合、たいがいは道をまちがえていたりする。渓相とかの経験値からいやなものが去来しているのだと思う。あるいはもっと深いけもののDNAの教えるものなのかもしれない。 で、 今度もいやな予知みたいなものが去来していた。 案の定、ほんとに徒労のような遡行に終わった。何時間もかけて地を這うような遡行の末にまともな写真はほとんど撮れなかった。川はただずるずる狭まるばかり。だらだらと流れが消えていくだけだった。理論的には普通そうなのだけれど、実際は、紆余曲折が大きくて、狭い流れの上にあっとおどろくようなゆるくてひろい渓に出たり、滝に出くわしたりするものだが、この川はまるで一方的に消失してしまった。 ![]() この頃は、まだこの川にも、もう一幕があるような気もしていた。 ![]() ![]() ひとつの源流の終焉その2ひとつの源流の終焉ゴルジュを高巻く
ゴルジュを乗り越えるのはやめた。
あんなものを見せられたのだ。神様が宿っているかのような光景を乗り越えてはいけない。そんな気がした。 僕は近くで野営したのちに、川をかなり下ってから森に入って迂回しぐるっと高巻いて、また源流に入った。 ![]() 夏は、テントがなくてもいいというのが最大のメリットかな?フライシート1枚で足りる。240gにしかならない。ただ大雨が続けば雨漏りするし、強風にも弱い。でも南八甲田の夏は最も安定している時期だし、台風はほとんどそれてしまうのでよけいな心配である。不運の大雨なら森に避難するだけである。シュラフとシュラフカバーは必需品だ。1日くらいなら一晩中焚き火してシュラフなしでもやり過ごせるが、寒さに震えるのはかなり体力を消耗するからね。シュラフカバーは露よけになるし、これ一枚あるおかげでシュラフを軽いものにすることができる。 ![]() ![]() ![]() 釣り竿を出してブナ虫をエサに岩魚を釣った。投げ入れたとたんに2匹釣れたのでさっさと切り上げた。疲れて気力もないし。コッヘルで米を炊いて、乾燥ネギとかワカメとかを入れる。岩魚を焼くあいだにお湯をわかして岩魚の薫製を半分入れて汁を作る。残りの半分をつまみながら、ラフロイグ(スコッチ)の水割りをのんで魚が焼けるのを待つ。この時間が至福の時だ。喉が焼けるような強い酒が沢の水割りにはぴったりだ。ナイフで箸を作ったりする。ふんわりとスローな時間が流れていく。 暗門の回廊でシンフォニーが聴こえる![]() 「すごい」 体全体が熱くなるような感動があった。予測を越えていた。 ハウリングした滝の音が耳鳴りのようにこだまして、それがまた体を打ち震わせた。 来てよかったなあ。来た甲斐があった。極に近い身体疲労はここちよくからだを揺らして、 水の回廊の中で浮遊するような開放感があった。 山の神がそーっと見せてくれた気がして感謝の気持ちが湧き出てきた。 よーし帰ろう、と思った。 そう思った途端だった。 急にパーッと強烈な日が射してきたのだ。あーっ、露出が合わない。急いでカメラ設定をいじくって露出を合わせる。あっ、あっ、なんだこれ!あわててシャッターを切る。 ![]() 急に色温度の高い青い光が射してきて、見る見る暗門の壁が浮き上がるように姿を現したのだ。僕を取り囲む巨大な3つの壁が生きている威厳のある顔のように現れて僕を静かに、決して威圧しているのではなくて、寛容の表情で見つめているように見えた。もう声が出なかった。それと共に暗く沈んでいた水の色が見る見る変容していく。 ![]() ![]() 耳に響く轟音はシンフォニーのようだった。打ち震えて、もうシャッターを切るのもやめて、ただ暗門の回廊の深奥の水の中で、静かに、何の言葉も浮かばないまま立ち尽くしているしかなかった。 |