この川の岩魚は幸せ者ですね。豊かなブナの森に囲まれた川に棲む岩魚はきれいで滋養に富む水の中を生き生きとはねています。
森と川によって生かされているのは岩魚だけではない。人間も含む全ての生き物が生かされている。
豊かな森は、二酸化炭素や汚れた空気を浄化し酸素を絶えまなく創出している。
森は雨水を蓄え、生物やバクテリアや土そのものによって浄化しきれいな水を創出し、多くの生き物を育んでいる。
生かされているのは森の生き物だけではない。
森は水を川に湧出し、川は流域を潤し、海の生き物にまで滋養を供給している。
水だけではない。
森は土を作り下流まで運び、平野をつくる。その土は農村を育み都市を育てる。
母なる山ですね。山の神様は女だそうですし。
それなのにあらゆる生き物の中で人間だけは、時として平気で森を壊し、谷を埋め、川を汚すという行為を続けてきたのです。山と森と川のおかげで生きながらえてきたのに。時々その恩をすっかり忘れてしまっている。都市の傲慢。科学技術のおごり。そういうものを感じますね。
僕は、深山に入り源流を上り森や川の自然を撮ってきたけれど、人間が埋めた谷や破壊した森や川も見てきた。それを見なければ森のほんとうの美しさ、大切さもわからなかったと思う。森と川の美しさを伝えたいと思う。と同時に、人間もまた自然の手のひらの上で生かされているのだというメッセージを写真に込められたらいいなとも思う。
八甲田を本格的に撮ってやろうと取り組んでまだ7年やそこらですが、いま、中間報告という意味で写真集を編集しています。きのう色校を終えました。編集だけで7ヶ月かかりましたが、ようやく3月中には出版できると運びです。自分の作品とか写真集とかには無縁の広告写真という世界を歩んできた者がはじめてクライアント抜きでラフスケッチも何もないところで撮り続けてきた写真集です。なにせ初物ですから。どうなりますやら。ご期待ください。
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