
何日も山を探し歩いて、これはという山桜をいくつか撮ったけれど、それでも何かいまひとつ心にひびくものが足りない。まあ良しとするか、「もう終了だ」と思いながら2週間近く歩き続けて足腰も手の握力も限界で悲鳴を上げ始めていたころ、ふと深呼吸して空を見上げた時にこの光景を見た。あっ、これはなんと心が吸い込まれる光景だろう。見上げて息を吐き出すとともになにかしら心の中のわだかまりのようなものすべてが抜けていくように感じられた。
これだなと思った。
撮り終えて、深奥のブナの森の真ん中で胡座(あぐら)をかいて一服した。カタカタカタっというアカゲラのドラミングが遠くの空から響きわたっていた。この時、明日は山を降りようと決めたのである。
(しかし実際カレンダーに採用したのはこの写真ではありません。別の趣の、もっといいかなあと思えるものがあったのです。)